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【新刊】放浪の唄 ある人生記録(虹霓社)

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高木護(著/文)
発行:虹霓社
B6変 350ページ 並製

最後の放浪詩人・高木護の原点
人間賛歌の自伝的エッセイ復刊

九州一円の野山を放浪しながら、その日暮らしの日雇い仕事。闇市番人、露天商、ドブロク屋、立ちん坊、人夫…。社会の底辺で出会った哀しくも愛すべきニンゲンたちとの交流をユーモラスに描き、放浪詩人・高木護の名を世に知らしめた出世作。半世紀ぶりに復刊。

稀有な放浪経験をもとに人の在り方を鋭く問うた『人間浮浪考』『人夫考』『野垂れ死考』など数々の優れたエッセイを遺した詩人の原点とも言える名編。しあわせなんてそこらにころがっているー放浪の末に高木がたどり着いた人間/自然讃歌は、生き方を忘れた私たちへの希望の唄である。

「わたしのような、何の取柄もない男の生き方は、一つしかない。
どんな逆境でも、のんべんだらりと、それなら、それになりきって、ささやかなたのしみを見つけることだ。」

「ニンゲンなんて、おもしろく、おかしく生きるが儲けではないか。」(本文より)

目次
放浪の唄 プロローグ
働きはじめる──葉ちゃん─その他のこと
十六歳の陸軍軍属──葉ちゃんの自殺と南方転属
十七歳のスパイ──とマライ娘
終戦・重労働刑二ヵ月──武装解除と軍事裁判
死の島の抑留生活──飢えとたたかった死の島レンバン島
ふるさとに帰る──両親は既に亡く喀血する体で鍬をもつ
おなごはこわい──飢えに泣く幼い兄弟のために作男になる
村でのいろいろのこと──ジープのハヤノ先生
口へらしのために家出──わたしは卑怯といわれてもいい
チャンバラ劇団の役者になる──劇団脱走・新劇団創立・スターの死
熊本市のバラック長屋に住みつく──政治結社理想協会の松介氏
担ぎ屋になる──闇屋のはじまり、はじまり
闇市場番人になる──わたしは、弱虫だ
飴屋の手伝いをする──花びらのような雪が降る
屋台店を共同経営する──満天の星は美しかった
古物商を兼ねる──古下駄の唄
易者になる──人生なんて
焼き芋屋になる──ミッチも好きだ
再び村のこと──ストップ、出来ない
豚小屋番人になる──おもしろく、おかしく生きるべし
趙家顧問になる──凄い小娘たち
金属回収業をはじめる──バサ、テツ、イモノ、ナマリ
プレス工場の重役になる──重役とは?
ボロ選別工になる──気の向くままに
ポン引きになる──それもおもしろいじゃないか
紙芝居屋になる──奥サンと女房
ドブロク屋をはじめる──人夫の神様のような
飲食店をやる──オール密造酒だ
露天商になる──サッちゃんのオッパイ
印刷工になる──愛が見えない
村へ逃げ帰る──弱虫も重病である
タブシバ工場を共同経営する──水車は、ひねもすカッタンコットン
座元になる──旅芸人の娘たち
トラック助手から、三輪車助手に格下──事業は五万円の車から
石工見習になる──嫁ごをもらおう
隠坊になる──芋生の源ヤンは、トンネルの番兵
最後の家出──永遠にさようなら
立ちん坊になる──イッちゃん、遊ぼうよ
乞食に弟子入りする──師匠のシャッポ君の乞食訓
唄い屋になる──デッカイキボウノクモガワク
拾い屋になる──歩きながらの昇天
パチンコ屋の用心棒になる──趙家の娘にまた逢った
三助になる──汝の名は男なり、アーメン!
木賃宿に住みつく──一発百円の夜の天使
旅館番頭になる──おなごの歴史は、アベック旅館から
飯場人夫から同帳場になる──出ツラーめし代と酒代=おけら
下請け会社の人夫になる──谷川雁と森崎和江夫妻
労働下宿の人夫になる──ドン底には、底がある
結婚──さらば九州よ
独りごと──または結論
あとがき
【解説】放浪詩人は戒める(澤宮 優)

前書きなど
【解説】
澤宮優「放浪詩人は戒める」より

「今、世の中の歯車がとめどなく狂っていると感じるのは私だけではないだろう。〔…〕その原因を見つけるのは簡単ではないが、戦後の歩みが正しかったのか考察するときに、高木が書いた著作を読むことで得られるものは大きい。そのスタートは勿論『放浪の唄』である」

「地位、学歴、金銭、人は余計なものを持ちすぎる。天にいる高木から「今は本物の人間は一人もいない」と喝破されないよう戒める必要がある。これから高木の数多くの著作は燦然と輝き、私たちを魅了し、ひとつの生きる道筋を示してくれる」

版元から一言
「高木護」というひとりの詩人と出会ったときの衝撃が忘れられません。すでにお亡くなりなっていた高木さんをもっともっと知りたくて、次々とその著書を買い求めましたが、どの本も名著なのに絶版ばかり。そのうちに、自分で復刊して高木さんの生き方/生き様を誰かに伝えてみたくなりました。

しかし、出版社での編集経験もないわたしにはその術(すべ)がありませんでした。だから、高木さんの評伝をお書きになった澤宮優さん(本書解説)に思い切ってご連絡を差し上げ、ご返信をいただいたときの喜びは、言葉にできないほどの嬉しさでした。そして、ご遺族からも復刊の許諾をいただき、独学のインデザインで本文を組み、などをしているうちに結局一年以上もかかってしまいました。ようやく完成したのが本書です。

澤宮さんは解説にこんなことを書いてくださいました。

「これから高木の数多くの著作は燦然と輝き、私たちを魅了し、ひとつの生きる道筋を示してくれる」

その生きる道筋を示すため、これからも高木さんの本を復刊していきます。山麓のひとり出版ですから、そうたくさんの部数を発行できるわけもなく、また第二弾をすぐ刊行できるほどの労力も資金もありません。一冊ずつの細々とした歩みしかできませんが、「一人でも多くの人に」ではなく、「高木さんを必要としているあなたに」届けたいと思っています。

著者プロフィール
高木護 (タカキ マモル) (著/文)
 1927(昭和2)年に熊本県山鹿市(旧鹿本郡鹿北町)に生まれる。就職した博多の丸善書店で文学と出会い、詩や小説を書くようになる。1944(昭和19)年、陸軍気象部に少年軍属として入隊。南方戦線でマラリアに罹り九死に一生を得る。復員後は後遺症に悩まされ職に就けず、放浪の旅に。農家の日雇いをはじめ、劇団役者、闇市番人、露天商、ドブロク屋などで糊口をしのぎ、福岡県久留米市の詩人・丸山豊の詩誌『母音』で詩作を本格化させる。同人には松永伍一、川崎洋、谷川雁、森崎和江らがいた。
 1954(昭和29)年、初の本格的な詩集『夕御飯です』刊行。翌年頃から、ときおり町で立ちん坊や乞食見習い、拾い屋等をしながら、九州の野山をひたすら歩く。この経験が後に『野垂れ死考』『木賃宿に雨が降る』など数々の作品を生む。北九州・八幡の労働下宿で人夫をしていた1963(昭和38)年、雑誌『女性自身』で特集が組まれ、同誌を読んだ女性と結婚し上京。詩人・文筆家としての道を歩んでいく。
 1965(昭和40)年、自伝的エッセイ『放浪の唄ーある人生記録』を発表、反響を呼ぶ。以降、『天に近い一本の木』『鼻歌』などの詩集、『人間浮浪考』『人夫考』『あきらめ考』『忍術考』などのエッセイ集を次々と刊行する。
 九州一円の放浪(高木は「ぶらぶら歩き」と呼ぶ)や人夫仕事の体験を元に、どん底で生活する人間の哀しみと逞しさ、明るさ、愛しさをユーモアを交えて描いた。〝敢然と用を果たさない〟 高木が放浪の末にたどり着いた思想は、我々の足もとを揺さぶる。自由と反骨の人。2019年、急性心不全のため逝去。享年92歳。

上記内容は本書刊行時のものです。

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