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【新刊】ある水脈と石川三四郎(虹霓社)

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山口 晃ヤマグチ アキラ(著/文)
発行:虹霓社
4-6 510ページ
価格 3,600円+税

『ヘンリー・ソロー全日記』訳者・山口晃の初著作、思想家・石川三四郎を新たに読み解いた力作

幸徳秋水、大杉栄と並ぶアナキズム運動の先駆者の一人と称せられる石川三四郎。その石川が出会った〝ある水脈〟。田中正造、エドワード・カーペンター、ヘンリー・ソロー、椎名其二、中西悟堂、金子きみ、唐沢隆三…そしてエリゼ・ルクリュ。
『ヘンリー・ソロー全日記』や『コンコード川とメリマック川の一週間』(而立書房)、『ソロー日記』 春夏秋冬全4巻(彩流社)など、ソローの翻訳で知られる山口晃による初の書き下ろし。

石川三四郎を従来の「アナキズム」「社会主義」では括らず、「身体」「草鞋」「さすらい」「居場所」「裸」などのキーワードを軸に、石川が出会った人々を通して思想家ではない石川三四郎像を描く。石川論の新しい地平。

<四六判:510頁>

目次
Ⅰ ある水脈との出会い
 一 土民生活
 二 保守

Ⅱ 水脈の傍らで
 一味
 原風景としての帆船
 「妹の力」
 斧吉と観音さま
 二人の異邦人
 モロッコの光と影のなかで
 なりわいと椎名其二
 武蔵野と中西悟堂
 裸
 歌集『草』出版のあとさき
 『ディナミック』から『柳』へ
 さすらいと居場所
 泉をつなぐ地下水脈
 思想でない、ある水脈

補記 踊りながら
補記Ⅱ 東洋の穏やかな呼吸―軽さとおおらかさ―

前書きなど
 四十年ほど前、子供が二歳くらいの頃、昼間、毎日時間があり、双子だったので自転車の前と後ろに乗せ公園に行っていた。しばらくするといっしょに歩いて行った。公園に碑があった。「私は何時も永遠を思ふが故に、時間を限った成業を願はない」と刻んであった。このとき郷土の人、石川三四郎について、私は何も知らなかった。 
 それから七、八年後であったろうか、町の図書館から石川三四郎宛の外国人書簡の整理を頼まれた。たまたま私が少しフランス語と英語が読めたからであった。日本人の書簡も含め、整理しながら面白い人だなと思った。
 数年して資料などを紹介する『木学舎便り―石川三四郎研究個人誌』というのを手作りで作り始めた(一九九七年九月が第一号)。十年続けて、第八号(二〇〇七年四月)で終わりとなった。 
 それから十数年がたった。柿の木から落ちやや大きなけがをして、一カ月ずっと寝ていた。毎日仰向けになって万葉集を読んでいた。気がつくと石川三四郎のことを再び考えていた。いままでと違って、この人はある水脈に出会った人だったのだな、と思った。私たち一人一人と同じように佇み、歩く人であった。永遠を見つめながら。
(「はじめに」より)

版元から一言
 石川三四郎といえばアナキストというのが一般的です。確かに「アナキスト」であることは間違いないのですが、でもそれだけではこの人物のほんの一部分しか表してないなとずっと思ってきました。2020年に復刊した石川三四郎の評伝『石川三四郎 魂の導師』の著者である大澤正道さんから、版元がなかなか見つからないという原稿を紹介されました。それがこの本の元となる原稿でした。

 山口晃さんといえばヘンリー・ソローの翻訳ですが、私にとって山口さんは『木学舎便り 石川三四郎研究個人誌』の人でした。原稿を読んで感動しました。これこそ私が感じていた石川三四郎だ、と。石川三四郎は大逆事件後の日本を脱出して渡欧した際に職探しをするのですが、英語ができた石川は語学や教育関係の仕事ならすぐ見つかるはずでした。しかし、石川がある職にこだわったために難航します。その職とはサンダル(革草鞋)工場と農園。山口さんは、そこから見えてくる石川三四郎にこだわり続けたのです。だからこそ、これまでにない石川三四郎が見えてきた。ある水脈に出会った石川三四郎。それは特別な水脈ではなく、いつの時代でもどんな場所でも耳をすませば聞こえてくる水脈。山口晃も出会った。あなたにもその水脈に出会ってほしいと心から願っています。

著者プロフィール
山口 晃 (ヤマグチ アキラ) (著/文)
1945年、埼玉県本庄に生まれる。『木学舎便り 石川三四郎研究個人誌』(1997~2007年、全8巻)、『木菟庵便り Thoreauvian notes』(2012~18年、全10巻)、『月の便り ある水脈の傍らで』(2012年より、年2回刊行中)、いずれも個人誌。20年ほど前から、1日のうち3分の1は農作業、大工仕事をし、残りの時間はヘンリー・ソロー全日記を訳している。H・Sソルト『ヘンリー・ソローの暮らし』(風行社)、ソロー『コンコード川とメリマック川の一週間』(而立書房)、『ソロー日記』 春夏秋冬全4巻(彩流社)を訳してきた。

上記内容は本書刊行時のものです。

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